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sacha
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Numero 4  「理想のステップファーザー」
 
僕のマミーはつい半年前、結婚を約束していた彼氏に出て行かれた。
その理由はすぐに理解できた。マミーの怠け癖と浪費癖のほかに何もない。
2年前、マミーと恋に落ちたチャイニーズ系のポールは、
まだ23歳だったマミーにすでに4歳の息子がいる、ということを知っても驚かなかった。
ここアメリカではよくあることだ。
10代で子供を産むことを決意するのは、そう少なくはない。
チャイルズという雑誌にteenage motherというテーマの特集記事で、
マミーが妊娠中に取材を受けたこともある。
もちろん産もうとしてできたのではないけれど、授かったからには産んでしまおう、
という感じだ。何とかなるだろう、と。
そういうわけで僕も産まれてきたわけだから、わりと人生をイージーに考えている。

そんなイージーな僕たち親子に、ポールはすごく優しかった。
まず3人が一緒に住むための家を購入してくれた。
ポールはまだワシントン大学を卒業したばかりの有望な若者なのに、
どうして僕たちにここまでしてくれるんだろう?って、
小さかった僕でも不思議に思ったが、
これも恋に落ちてしまった男の弱み、というものなんだろう。

マミーもはじめはポールを愛し、niceにしてあげていたが
それがいささか当たり前に思うようになっていった。
家のローンのためにポールが10時まで働き、帰宅すると、
シンクには洗うべきお皿が山のようにたまっていてそれをまず洗う。
そして夕食は何も用意されていない。冷蔵庫から肉を取り出しサンドイッチにして食べる。
それが毎日続くと、金曜日にもなるとポールの疲労は絶好調にまで達する。
そんななかでも、週末は僕に勉強を教えてくれた。
いまファーストグレード(1年生)の僕がすでにフォースグレード(4年生)の学力レベルにまで
達していることは、面倒見のいいポールがいてくれたからに他ならない。

ある夜、僕が眠れなくてベッドでマンガを読んでいると、
階下のキッチンのほうから、ガラスが割れる音が聞こえた。
降りていってみると、いつも笑顔のポールが、こぶしを真っ赤にさせて握りしめ、
テーブルに顔をつっぷしていた。そして頭を抱え、こう叫んだ。
「もう終わりだよ。That’s the end!
これだけ君たちに尽くしても、君は僕に何をしてくれたっていうんだい?」
そしてドアをばんと開けて、車のエンジンをふかし闇に消えていく。
マミーは、テーブルの上に乗っかっていた調味料やお皿をきれいにふり落とし、
激しく泣いた。それでも5分もすると、冷蔵庫からミルクを取り出し飲み干した。

あれから半年。ポールが我が家に戻ってくることはないが、
家のローン、クレジットカード、コストコのメンバーシップなどの請求書には、
いまだにポールのアカウント(銀行口座)から引き落とされている表記がある。
マミーは一切払っていないようだ。
いつでもポールは、アカウントをキャンセルできる立場なのに
なぜそれをしないんだろう? 弁護士を介在すればマミーから慰謝料だって取れるはずだ。
あげくの果てには、昨日、家の雨漏りの修理を頼み、
ポールはごていねいにも直していってくれた。
この2人って一体どうなってるんだろう。
ポールの周囲の人々も、彼のいい人ぶりにはあきれているはずだ。
僕ならきっとこういうだろう。「早く彼女と縁を切れば、ハッピーになれるのに」
ポールには新しい彼女ができたようだが、まだマミーの存在を知らせてはいないようだ。
それにしても、今後いつまでポールは、マミーの浪費した請求額を払い続けるんだろう?
とにかく、ポールが僕の正式なステップファーザーにならなかったことは
悲しいのだけれども、どうしようもだらしないマミーを愛してしまったということに
同じ男として哀れみを感じずにはいられない。(End)


Note:全米ステップファミリーのサポート協会はこちら
[ http://www.saafamilies.org/ ]
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